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【2】
夜が明け、新しいいつもの生活が始まった。
学校までは昨日と同じ――当たりを引いたあの道を、ただぼんやりと歩く。
少年は時折大悟の顔を覗き込みながら、その周りをうろうろとついて行く。
あまりの鬱陶しさに苛立ちを見せると、一旦は黙るものの、すぐに「ねぇ」と声を掛けながら隣をついて歩いた。
「……ったく、お前は金魚のフンかよ」
「というよりは、仲良さそうなカップルって感じだけど」
後ろから不意に言われ、眉間に皺を寄せたまま振り向くと、そこには呆れた顔の千紘が立っていた。
「朝から楽しそうだね」
無愛想にそう言って、千紘は大悟の横を通り過ぎた。
「別に楽しくなんかねえよ」
早足で彼の隣へ並ぶ。
しかし、千紘は変わらず冷たい表情のままだった。
「……なんか機嫌悪い」
「別に」
こちらに興味を示さない彼の前にひょいと出ると、大悟はその眉間をぴこっと指差した。
「ここ。皺寄ってんぞ」
伸ばされた人差し指を挟んで二人の視線が合う。
一瞬の沈黙のあと、千紘がふっと笑った。
「お気に入りの台詞、とられちゃったな」
やっと表情を崩した彼に大悟も頬を緩ませる。
そんな二人を、少年は少し離れたところからじっと見つめていた。
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