【2】

1/14
前へ
/43ページ
次へ

【2】

夜が明け、新しいいつもの生活が始まった。 学校までは昨日と同じ――当たりを引いたあの道を、ただぼんやりと歩く。 少年は時折大悟の顔を覗き込みながら、その周りをうろうろとついて行く。 あまりの鬱陶しさに苛立ちを見せると、一旦は黙るものの、すぐに「ねぇ」と声を掛けながら隣をついて歩いた。 「……ったく、お前は金魚のフンかよ」 「というよりは、仲良さそうなカップルって感じだけど」 後ろから不意に言われ、眉間に皺を寄せたまま振り向くと、そこには呆れた顔の千紘が立っていた。 「朝から楽しそうだね」 無愛想にそう言って、千紘は大悟の横を通り過ぎた。 「別に楽しくなんかねえよ」 早足で彼の隣へ並ぶ。 しかし、千紘は変わらず冷たい表情のままだった。 「……なんか機嫌悪い」 「別に」 こちらに興味を示さない彼の前にひょいと出ると、大悟はその眉間をぴこっと指差した。 「ここ。皺寄ってんぞ」 伸ばされた人差し指を挟んで二人の視線が合う。 一瞬の沈黙のあと、千紘がふっと笑った。 「お気に入りの台詞、とられちゃったな」 やっと表情を崩した彼に大悟も頬を緩ませる。 そんな二人を、少年は少し離れたところからじっと見つめていた。     
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加