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なんとか今日の授業を終えると、大悟はクラスメイトの瀬能 千紘と揃って昇降口を出た。
頭の回転が速く冷静な千紘とは小学校からの縁で、性格はまるで正反対なのに何故か気が合い、高校に進学した今もなんだかんだと一緒にいる。
部に所属してない大悟と塾のある千紘は、放課後をいつも二人で過ごしていた。
「なんか食いに行かねえ?俺、腹減ったんだけど」
おなかを擦りながらそう言うと、千紘は目を細めて微笑んだ。
「いいよ。大悟、お昼パンだったから足りなかったんだろ」
「僕も!だってお昼食べてないから!」
二人の足がぴたりと止まり、二人揃って振り返る。
少年が同じように足を止め、こちらを見上げてニコニコと笑っていた。
「お前……まだいたのか」
「うん。だってまだお願い聞いてないもん」
唖然とする大悟と、満面の笑みを浮かべた少年を交互に見ながら千紘が尋ねた。
「誰?」
「暑さでイカれちゃったヤツ」
「イカれた……?」
「ひどい!僕、待ってるって言ったじゃん」
「帰ってくれても良かったんだけど」
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