【4】

6/14
前へ
/43ページ
次へ
「志望校への入学率がね、今通ってる塾より、あいつが通ってる塾の方がいいんだって。カリキュラムも充実してるし、今からでも変えたらどうかって進められたんだ。すぐにでもOKしたかったんだけど、費用の問題とかあるだろ?だからとりあえず親に相談してからって思ったんだ」 「…………マジ?」 「ふふっ……マジ」 「なんだよ……」 体中の力が抜けたように大悟はその場に座り込んだ。 「志望校に入る為に、お前との時間を割いてまで塾へ通ってんだよ?受からなきゃ意味ないだろ」 「…………」 「まぁ、もし告白されてたとしても丁寧にお断りしたけどな」 「……やっぱそうだよな」 「だって俺、大悟が好きだから」 思わず顔を上げる。 「俺は、大悟も同じ気持ちだと思ってたけど」 「え…………」 千紘はにっこりと微笑んだ。 「お前……告るの遅すぎ」 彼はそう言って、座っている大悟の額にデコピンをした。 痛いのに、なんだか嬉しくて、おでこがむずむずする。 火照る顔を隠すように俯き、額をさするその目の前に、すっと手が差し出された。 ちらと見上げると、顔を赤らめた千紘が、いつもと同じ柔らかい笑顔でこちらを見下ろしていた。 そっと自分の手を重ね、ゆっくりと立ち上がる。 そんな、甘い空気を裂くように予鈴が鳴り響いた。 「行こうか」 千紘はその手をそっと離して、くるりと背を向けた。 あまりにあっさりとした態度に胸の奥がもやっとする。 立ち止まったままの大悟に気付いた千紘が、振り向いてその名を呼んだ。 「どうした?」 「……」     
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加