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「人間界へ来ることは許されていないからね」
彼は苦笑いを浮かべた。
「後悔はしていないよ。花開かせたかった……たとえそれが、神に背くことだったとしても」
「…………」
「アダムとイブが創造されてから、それが世界の定説になった」
「は……?」
「じゃあ、今目の前で結ばれた君たちは一体なんなんだろう」
「お前何言って――」
「何も変わらない……同じ想いのはずなのに」
その体がゆっくりと浮いていく――まるで空に吸い込まれるかのように。
「……それが罪だというのなら、僕は甘んじて罰を受けよう」
薄汚れた埃のような塵が彼を包んで、その体が少しずつ泡のように溶けていくのをただじっと見ていた。
「そういえば、君は僕の犯した【禁忌】を知りたがっていたね」
彼は慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。
「え……」
「教えてあげる。僕が犯した【禁忌】とは――」
天使の口元がゆっくりと動く。
驚いた表情を浮かべた大悟に、彼は優しく微笑むとその姿を消した。
唖然と見上げる視線の先には、青く澄んだ空だけがどこまでも広がっていた。
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