【4】

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「こんなところにいた」 小さな声でそう言うと、千紘は大悟の隣に腰を下ろした。 図書館の片隅で、大悟は見慣れない分厚い辞典をゆっくりと捲っていた。 「めずらしいな。何見てんの?」 千紘がからかい半分で表紙をめくる。 「【天使と悪魔】」 「…………」 「ちょっと意外……こういうのに興味あるんだ」 「……いや、興味はない」 (だる)そうに、でも何かを探すように、その指は一枚また一枚とページを捲る。 千紘はつまらなさそうに口を尖らせたかと思うと、徐にスマホを取り出した。 続けざまに今度は大悟がポケットへ手を伸ばす。 取り出したスマホの画面を見て、思わず瞬きを繰り返した。 『暇なんですけど』 隣の千紘へと視線を投げるが、こちらを見る気配はない。 再びスマホが小さく震える。 『相手してくれなきゃ拗ねちゃうよ』 さらに。 『お腹すいたりしないのかな?』 小さく息を吐き出してもう一度横へと視線を向けるが、彼は相変わらずスマホを見たまま――と思ったら、ちらりとこちらを見て拗ねたように口を尖らせた。 一瞬唖然としたものの、今まで見たことのない彼の表情につい口元が緩んでしまう。 「……行くか」 重い本を手に立ち上がり、棚の間を縫うように歩く。     
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