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「願いを一つ叶えないと、天界に戻れない」
「え……」
二人の動きが止まった。
「どういうこと?」
先に声を出した千紘の問いに、少しだけ間をおいてから少年は口を開いた。
「……僕は、天界で禁忌を犯した。その罰として人間界に下ろされた……選ばれし人間の、望みを叶えるという制約付きで」
彼は大きく息を吐き出して顔を上げた。
「だから僕は、どうしても君の願いを叶えなきゃいけないんだ」
「……お前が犯した【禁忌】ってなんだよ?」
「秘密……君には関係ないでしょ」
「願いって、どうしても大悟のじゃなきゃダメなの?」
「うん。当たりを引いた人の願いを叶えるって規則だから」
「その割にはえらく適当な決め方じゃねえかよ」
「どうやって当たったの?」
「道に落ちてた紙に書いてあった」
瞬きをする千紘に目くばせをすれば、彼は肩を竦めて見せる。
大悟は諦めたように大きく息を吐き出した。
「お前、名前は?」
「……内緒」
「内緒ってなあ、それがわかんなきゃ呼びようがねえだろ」
「どうせ、おいとかお前とか呼ぶくせに」
最もな指摘に言葉を詰まらせる。
「でも名前ぐらいはあるだろ?教えてもらっちゃいけないのかな?」
そう千紘が助け船を出すと、彼は顔を伏せて小さな声で「……エル」と言った。
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