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「エル?」と大悟が反復すると、驚いたように顔を上げたものの、再び俯いて「なんでもいいよ」と呟いた。
ちらりと見た千紘が首を横に振ったのを見て、大悟は一息つくと「まぁいいや」と言った。
「で、願いならなんでもいいのかよ?」
「まぁ……常識の範囲内で」
大悟は腕組みをして固く目を閉じた。
その間少年はポテトを頬張り、千紘は静かにコーヒーを飲む。
「じゃあさ…………金くれ」
「…………」
「…………」
「……金――」
「あのさ、僕、常識の範囲内でって言ったよね?」
「言った」
「叶えてもらえると思った?」
「なんでもいいって言ったじゃねえか」
呆れ顔の少年に向かう大悟は対照的にすごく真顔で、千紘は思わずぷっと吹き出した。
「大悟らしい」
「どういう意味だよ」
「単純だなって思ってさ」
その言葉についむっとしてしまう。
それを即座に感じ取った千紘が怒るなよと間髪入れずに言った。
「余計なことを考えず、ストレートな欲求だなっていう意味。確かにそれが一番確実だからさ」
「……よくわかんねえ」
「俺がわかってればいいの」
千紘が楽しそうに大悟を見ると、彼は恥ずかしそうに頭を掻いた。
ウーロン茶を飲みながら、そのやりとりを少年はじっと見ている。
「で、どうなんだよ。叶えてくれんの?」
「無理」
「なんでだよ?オレが欲しいって言ってんのに?」
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