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「それで君は幸せなの?」
「は?」
「それで君は幸せになるのかって聞いたの」
「んだよ、それ。っつーか、そんな条件なかったじゃねえか」
「誰にでも通用しそうなお願いはダメだよ。君だけの願いを叶えなきゃいけないんだ」
「んなこと言われても……」
「本当にないの?」
不意に千紘が尋ねた。
「本当にないのか?……叶えたいこと」
真っ直ぐに見つめられて思わず視線を逸らす。
「急に言われても思いつかねえよ……」
「……俺はあるけどな、叶えたいこと」
「なんだよ?」
顔を上げると、まだこちらを見ている彼と目が合ってドキリとする。
「残念だけど、君の願いは叶えられないよ」
少年が言った。
「今回は彼の願いだから」
手に持ったポテトで大悟を指す。
大悟は視線を彷徨わせると「時間をくれ」と腕組みをして、大きなため息をついた。
塾へ行く千紘とはいつもの場所で別れ、家までの道のりをだらだらと歩く。
ずっと考えていたが、何も答えが出ないまま家についた。
「ただいま」
部屋に入ると転がるようにベッドへ横になった。
……叶えて欲しい願い。
天井をじっと見つめても答えがそこに浮かんでくるはずもなく、静かに目を閉じた。
今、一番欲しいものは何か。
『本当にないのか?叶えたいこと』
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