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真っ直ぐに自分を見つめる千紘の顔が浮かんで、はっと目を開けた。
「いやいやいや……」と呟く。
そんなことはない、あってはいけないと心の中で繰り返した。
「で……何?」
突然の声にそちらを向く。
ベッドの脇から、少年がひょっこりと顔を覗かせてこちらを見ていた。
「願い事。決まった?」
「……んな簡単に決まらねえよ」
「そう?さっき何か思いついたみたいだったけど」
その台詞に思わず彼の顔を見る。
痛いところを突かれた気がするのは何故だ?
「思いついてなんかねえよ。っていうか、なんでいるんだ?」
「なんで……って、他に行くとこないもん」
「お前天使なんだろ?その辺をふらふらしてりゃいいじゃん」
「そんなの嫌だよ。っていうか今、翼ないし。今夜は雨だから外なんかにいられないよ」
拗ねたように頬を膨らます少年に目をぱちくりとさせる。
「……今夜雨降るの?」
「降るよ」
「…………」
「嘘だと思うかもしれないけどホントだよ。わかるもん」
お得意のドヤ顔に「好きにしろ」とだけ言って、大悟はごろりと背を向けた。
夕食時、少年はごく当たり前のように大悟と一緒に食卓を囲んでいた。
記憶はいくらでも操作が出来るらしく、天使なのにその姿が見えるのは、翼がないからだと彼は言った。
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