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いつもの通学路。 そのど真ん中に何か落ちていた。 その前で足を止め、しばらく眺めていたが、誰も気付かないようなので拾ってみた。 見た感じ、テストではなさそうだ。 このサイズだと落とした本人は気付いてないだろう。 個人情報のどうのこうのはこの際いいかと判断し、皆川(みながわ) 大悟(だいご)はそれをゆっくりと広げてみた。 そしてそこに書かれた文字を読み上げた。 「あたり」 首を傾げる。 何が?と思いながら、紙の裏表をもう一度見返していたその時―― 「大当たり~!!」 辺り一面に響いた大きな声に、思わずその方向へ顔を向けた。 少年が空から降ってきた。 冷静に脇へひょいと避ける。 彼は上手い具合に足からすとんと着地してみせた。 「おめでとう!君が当たりだよ!」 少年はにっこりと笑いながら、大げさに両手を広げた。 目をぱちくりとさせて、再び空を仰ぐ。 「……どこから降ってきたんだ?」 「天国だよ!」 ゆっくりと視線を落とすと、彼はにこにこと笑いながらこちらを見上げている。 「どこからきたんだ?」 「天国だよ!」 「……暑さでやられちゃったか」 大悟はそう呟いて学校へと足を向けた。 少年はぐるりと前に回りこむと、ストップと言いながら両手を突きだした。 「本当だよ!僕、天使だから!」 「あぁそうなんだ。そりゃすごいや」 特に止まるでもなく、抑揚のない一本調子の返答をする。 遅刻した理由が『バカの相手をしてました』では、些か格好が悪い。 「信じてないでしょ!僕、翼だってあるし、空だって飛べるんだよ!」 「へぇ、そりゃすごい。じゃあ飛んでみせてよ」 「……今はムリ」 「やっぱり嘘なんじゃねえか。じゃあな」 「嘘じゃない!ねぇ、待ってよ!」 少年は早足で歩く大悟の腕をぐいと掴んだ。 「何だよ!」 「君が当たったんだよ!」 「何にだよ!」 「僕にだよ!」 「はぁ!?」 「君の願いを叶えてあげる!」 開いた口が塞がらない。 「……冗談」 「冗談なんかじゃない!ホントに叶えてあげるよ……1つだけだけど」 自信満々のドヤ顔を唖然と見つめていたが、やがて大きく息を吐き出した。 「とりあえずガッコ行くわ」 「じゃあ、僕ここで待ってるね」 訝しい表情のまま学校へ向かう大悟の背中に、少年は大きく手を振った。
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