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そう、蝶だ。あの青い蝶が目の前に唐突に現れたりしたから。だから咄嗟に避けようとしてしまって。
「蝶? 」
古都は変わらぬトーンで微かに首を傾げた。頓狂な返答をしたわたしを茶化しもしない。いつも連んでいる子たちの大袈裟な反応とずいぶんと違うので少し調子が狂う。あの子たちは何事も笑い事にして、深く考えないようにすることによって毎日を騙し騙し楽しげに過ごそうとしているのを、わたしは知っている。仕方ないのだ。そういう年頃なのだ。
じゃあ──古都が何事か続けようとした言葉は突然中断された。
「灯! 」
大きく叫んでわたしの腕にしがみついてきたのは、同じグループの沙奈だった。首に触れる猫っ毛がこそばゆい。
「どうしたそれ」
沙奈は脚の包帯を見て大笑いする。彼女の相手をしている間にいつのまにか古都はいなくなっていた。
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