II

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放課後、自転車のことを思い出した。昨日は結局転倒の後親に迎えに来てもらって、自転車は古都が学校の駐輪場まで運んでくれたのだ。彼女に訊くと、ああ、と頷いた。停めた場所まで案内してくれるという。 「カゴがね、ちょっと歪んじゃってた。たぶん前輪も。乗り続けるのは危ないと思う。電車で来たんでしょ。帰りもそうすれば? 」 停めたわたしの自転車を前に、古都はカゴを触ったり前輪を浮かし回したりして単調な声で説明する。 「そうする」 古都はそうしなね、と言った後朝のようにあっさり去ろうとした。 「どこ行くの? 」 思わず声を掛けたのはどうしてだったか。今日一日の古都の振る舞いの不思議さを観察していたせいか。古都は背中越しに振り返って控えめに眉を上げた。 「来る? 」 質問の答えになっていない、と思いながらも言われるがままにつられて頷いてしまっていた。強引さはかけらも無いのに、何故だか気がつくとふわふわと古都に素直に従ってしまう。 着いたのは今まで行ったことのない、薄暗い教室だった。 「部室」 美術部、必要最低限な単語だけを発するのが古都らしい。私たちのほか誰もいない室内をてきぱきと動いて何やら絵を描くための準備を整える。古都が運んできたキャンバスはやけに大きかった。 「文化祭が済んで、共同のステージバックが終わったからやっと個人の絵を進められるんだ。だから進捗は遅いよ」     
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