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「カケル、心配しないで大丈夫よ。あなたのむずかしい気持ちはワタシがサポートして話すから」
表は、高校生にしてもチビの160cmそこそこのカケルの姿をした嶋左近が妙に勇ましく、
「清美殿、ワシが、義父に会えばすべてはっきりするでござる。それまではこの左近、清美殿の息子、時生カケルとして従い申そう」
左近の言葉に、涙を浮かべる母、清美が、我が子の不憫(ふびん)をぎゅっと手を握って励ました。
カルテを持った看護師が、
「時生カケルさん、時生カケルさん、どうぞ、お入り下さい」
と、診察室へ案内した。
――診察室。
白を基調としたこじんまりとした診察室に、L字型に仕切った机を挟んで医者と患者が向い会う。
医師、北庵は向い開きではなく、パソコンの電子カルテへ向きながら、横向きに耳を傾ける印象だ。
北庵は、おそらく40代の盛りにあるのだが、人の悩みを専門に聞くスタンスからか、頭はもう真っ白だ。その髪を小綺麗に刈上げさっぱりとなでつけ清潔な印象だ。黒斑のスチールアームのメガネ。キリリと掛け見るからに信頼がおける。カケルへ身体を捻って向き合い、落ち着いた口調で尋ねた。
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