6精神科、北庵病院(現代、左近のターン)

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「時生カケルさん、どんな感じですか? 」 左近は、北庵の顔相やたたずまいをコクと見定めた。顔立ちと振舞い、口舌口調は知りも知ったり義父殿とウリ二つに似ているのだが、やはり、戦国と現代、着ている物も違えば、姿形も違う。何より、この北庵には左近に対する親しみがないのだ。それは、義父と娘婿の信頼性が垣間見えない。 左近は、その理知の分析からこの北庵は、己の義父出はないと結論づけ話し始めた。 「北庵先生、わからんのです。さっきまで、ワシはたしかに関ヶ原にいた。馬で駆け、徳川家康の首を狙って突撃を仕掛け、今一歩、のところまで迫ったのだが、横合いからの種子島の銃弾に倒れた。そこまでは、ワシは嶋左近であったのだ。目覚めたら、この世の清美殿の息子、時生カケルになっておった」 北庵は、神妙な面持ちで静かにうなづいた。 ――信貴ヶ丘公園。 北庵の診察を終えた左近は、母、清美が左近ことカケルを子供の頃によく遊びに来た公園へ連れてきた。 母子の懐かしい思いでに触れれば、まったく、誇大妄想に陥った息子の琴線(きんせん)に触れ我を取り戻すと思ったからだ。 左近と清美は、並んでブランコに座った。
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