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とはいえ、九年は長い年月だ。
同期で企画したキシの送別会は、当日適当な理由を言って欠席した。キシが退職の挨拶回りに来た時、僕は彼の顔を見なかった。キシも近づいてこなかった。
別れて日が経つにつれ、まるで殴り合いでもしたように体が痛んで、眠れなくなった。
別れたというが、付き合っていたというのでもない。
キシと二人でいた時間は、ほとんど金曜日の夜から土曜日の朝にかけてで、それが何回だったか数えたことはないが、数えたところで、所詮半年足らずの時間だった。
キシが会社を辞めて僕の前から姿を消した直後、アパートの近くのごみ置き場に山のように積まれたごみを見た朝、雨が降っていた。
嫌な臭いが鼻をつき、いっぱいに詰め込まれたごみ袋はどれも半透明だった。白いビニールの向こう側に、吸い殻、野菜か果物の皮のようなもの、インスタントラーメンのカップ、割り箸、弁当容器、使い捨てのスプーン、いろんな汚ならしいものが見えていた。雨粒がごみ袋の山に落ちかかり、ばたばたと大きな音が響いて、目に涙が滲んだ。僕はそういう自分を憎んだ。
捨てられたというほどのことは何もなかったのだ。何一つ。
だから、何も感じなければいいと思った。
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