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「病院に、行った方がいいな」
と、英司はきっぱりした口調で言って起き上がり、ベッドにあぐらをかいた。
「病院で治るようなものかな」
と僕が言うと、ちょっと顔をしかめ、しばらく考えてから、
「睡眠障害か睡眠外来で検索して。近所のクリニックでいいから」
と言う。
「ああ…」
「あと、夜どんな状態かメールするから、持ってって、そのまま医者に見せて」
ちょっと面食らって、
「あの、詳しいの?」
と聞くと、
「…俺が詳しいか?」
と英司は短く刈り込んだ頭に手をやって、しばらく首を傾げた後
「俺は、医者なんだけど」
と言った。
「は?」
僕が声を上げると、英司は困った顔をした。
「お医者さんなの?」
「はい」
その後、僕が睡眠外来のクリニックを検索して予約を入れると、英司が医者に見せるためのメールを送ってきた。
メールによると、僕は夜中に何の前触れもなく絶叫し、怯えて大声でわめく。一分かそれより長く続いて、そのうちおさまる。目が覚めているように見えるが、話しかけても聞こえていない。
確かに、自分の叫ぶ声を聞いたことはなかった。その時に起こした、とキシにも他の人にも言われたけど、ほぼ憶えていない。
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