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英司は、僕と知り合った店から電車で二時間くらいかかる場所で、クリニックを開業していた。僕は、それ以上のことは聞かなかった。
キシの時と同じで、興味が持てないのと、聞いても仕方がないからだ。
ただ、そういう人なら、付き合う付き合わないみたいな話にならなくて楽だ、と思った。
彼に会うのは月に一度か、もっと間が空いたが、会い始めて一年近く経った頃、連休にかけて休みを取った、と英司に誘われて、彼と僕のいる場所の中間あたりで、ホテルに泊まったことがあった。
午後に待ち合わせて、そこから英司の車に乗った。ドライブしている時に、結婚のことを初めて質問した。
「結婚、してる」
と英司が答えた。
「別居してもう、すごい長いけどな」
「へえ。子供は?」
「子供はいない」
「ふうん」
しばらく沈黙が続いた後、信号で止まった時に、
「何で急に、その質問してきたの」
と英司が言った。僕は彼の横顔を見た。
「いや、前から聞こうと思ってて」
「俺が結婚してたら、気になる?」
「いや、そういうんじゃない」
正直、僕にはどうでもよかった。英司が、僕の無関心な態度に飽き足らない、ということもわかっていた。
「奥さんの親が、うちの親父の患者さんだった」
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