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と英司が言い、同じ人とは二回までしか会わないことにしていたので、あと一回なら、と言おうとすると、
「まあ、でも、忙しくてそんなに時間ないんだけど」
と彼が続けた。
「あ、そう」
「また連絡していい?」
「まあ、いいよ」
「付き合ってる人とかいる?」
「うーん」
ベッドの横に立っている英司を見上げた。背が高くて、僕の好きな体つきだった。身につけた服はシャツとジーンズで、若いように見えたけれど、年上だろう。
「秘密なの?」
「なんで聞くの」
「そりゃ、気になるからに決まってるでしょ」
誰かと付き合う気はなかった。僕が黙っていると、英司も黙って見ているので、
「…彼氏みたいのは、いない」
と答えた。
「ふうん、それはラッキーだった」
彼はつぶやいて、笑顔になり、
「じゃあ、また連絡するね」
と言って、約束通り夜中に出ていった。
どこに住んでいるのか、今から帰りつけるのか、何回か夜中に人を帰しているうちに、そんなことは気にならなくなっていた。
二回までなら、僕はすぐ忘れた。相手がしつこく言い寄ってくることもそれほどない。
泊めなければ、よく知らない人の横で泣きながら目が覚めることもなく、朝になってうなされていたと言われることもない。
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