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その場所は、キシが自分でも知らずに心の底に隠しているのだが、何故か僕はその流砂のようなきらきらした何かに手を伸ばして、それが絶え間なく静かに流れているのを感じることができた。すると、キシが、どうした、立ちずさんで、とその人に優しく呼びかける声が聞こえてくるのだ。 僕はキシにこのフレーズを何度か言われたけど、それ何なのと尋ねようとして尋ねたことはなかった(なんとなく意味はわかるが)。 キシの声を聞いているのは僕だけで、その人の耳には届かないのだろう。僕の胸に、キシの悲しさが、冷たい涙の匂いとともに流れ込んでくる。 僕には聞こえているから、とキシに言いたいのだが、それは彼を余計に悲しませるだろうから、口に出せない。僕の胸はしんしんと冷え、しかし光る粒の流れは止まらず、死んだ人はそこに立ち続ける。 キシの心にいちばん近いところにいるその人に、理不尽な嫉妬を感じないわけではなかったが、自分の心が作って見せるこの光景は、何故か僕をひきつけて、美しい旋律が不意に耳に流れ込んでくる時のような心地よさと悲しさを連れて、時折心をよぎった。
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