act.04

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 ほとんど内容が分からない専門的な質問が並ぶ。おそらく、羽柴もこのようなテキストを学んでから後、資格試験に挑んだのだろう。大学を卒業してなお、試験を受けるなんてゾッとしない話だが、大人になってからもそんな情熱を傾ける何かがあることは正直羨ましかった。  真一とて、今の仕事に情熱がない訳ではない。やりがいも感じている。でも、試験とか試合というものは一種独特のものだ。その一戦から離れた位置に立つと、なぜかその時の緊張感をまた味わいたくなる。  きっと、あの人は毎日そんな緊張感の中で戦っているんだ。 戦う。羽柴に妙に似合う言葉だった。世が世なら、武将といってもおかしくない面構えをしている。今時珍しいタイプの「色男」だ。きっと女性にもよくモテるだろう。  真一は、物語調になったあるトレーダーの栄光と挫折を扱った本を購入した。  書店を出て腕時計を見ても、まだラッシュ時に重なるような時間帯だった。  もう少し時間を潰していこうかな・・・。  真一は、近くにあるテナントビルに入った。このビルは主に飲食店が入っている真新しいビルで、最近女性誌にもよく取り上げられるようなレストランやケーキ店が軒を連ねていた。  真一の目当ては、一ヶ月前から発見した甘味処の店である。先ほどシャツを届けられた時に出されたケーキが少々しつこかったので、抹茶でも飲んでさっぱりしようというのが真一の魂胆だった。買ったばかりの本にも、少し目を通したいし。     
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