act.15

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 青年が手紙を差し出すと、初めて男の顔に表情らしいものが浮かんだ。  酷く悲しげで、優しげで。  だが次の瞬間には、振り切るように視線をそらした。  どんな事情があるかは知らないが、手紙を書いた主を、この男は恨んでいるのかもしれないと、漠然と感じた。  ひどい思いをして恋人とでも別れたに違いない。丁度、自分のように。 「死ぬ前に、せめて封くらい開けてやったら? そんなのなんかフェアじゃないじゃん」  青年は、男に手紙を押し付ける。  男は、手紙を受け取ろうとしない。 「じゃ、俺がここで破ってやろうか?」  オーバーなジェスチャーで青年が封筒に手をかけると、男の素早い手が手紙を奪い取った。 「なんだ。そんな気力があるんなら、とっとと読んでやりゃいいじゃん」  青年は溜息をつくと、肩を竦めて見せた。  空の厚い雲が晴れて、夕日が二人を照らし出す。 「あ、きれいな夕日」  何気なく青年が呟いた。  その言葉に何を感じたのか、男が再度瞬きをして、夕日に目をやった。  男の表情がふいに和らぐ。  男の目から、一滴の涙が零れ落ちた。  ── 今、やっと目が覚めたような顔をしてる。  青年はそう思って、はっとした。  いつかそんなこと、口にしたっけ。     
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