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「また派手にやっちゃったな」
辺りには裁ちバサミやまち針、しつけ糸の束が散乱している。
床のものを拾い集めようと手を伸ばしたと同時に、一番側にいたオサムが声を上げた。
「あ! 血!」
どうやら針が刺さったらしい。真一の左手の中指から血が浮き上がっていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?!」
キヨシが慌てて指に触れようとするところを「触らないで!」と真一が怒鳴って制した。今までの温厚な真一からは想像できないくらいの緊迫した声だった。
その声に純粋に驚いたのだろう。キヨシはおろか、オサムやヨウスケ、コウジも身体を強張らせている。
「ごめん、怒った訳じゃないんだ」
真一は血を舐め取りつつ、右手でキヨシの頭をなでる。と、キヨシのシャツの腕に血が滲んでいることに気が付いた。真一は少し眉間に皺を寄せたが、すぐにあの大らかな笑顔を浮かべた。その笑顔を見て、子供達もほっと肩の力を抜く。
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