act.05

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『それは大丈夫。ちゃんと片付けたって言ってた』 「洋服とかにもついたのかな。燃やしてくれるだろうか」 『大丈夫。マスターには伝えてるよ』 「よかった・・・。とにかく、ありがとう。迷惑をかけて。矢嶋さんにも謝っておかないと・・・。また店に行きにくくなっちゃったな」 『何言ってんだよ。また絶対来てくれって言ってたよ。飲み代ツケといてるからって』 「え! お金も払って来てないの?」  今度は真一が溜息をついて頭を抱えた。  そのしばらくの沈黙をどうとったのだろう。変に深刻な隼人の声が言った。 『今日お昼からそっちに行こうか? いや、今すぐ来てほしかったらさぁ、行くよ。マジで』 「まさか! 大丈夫だよ。二日酔いなだけだから」  真一は笑って電話を切った。自分の笑い声が頭に響いた。  隼人にはそう言ったものの、結局仕事は手につかなかった。左手の怪我は、確かにたいした事はない様子だったが、やはりいつものようには動いてくれる訳ではない。命の次に大切な手を迂闊に怪我させるなんて、職人として失格である。それに加え、頭もだるい。液状の二日酔いの薬を飲んだせいで痛みは幾分かとれたが、ぼうっとして集中ができなかった。     
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