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act.03
翌日、真一の店を羽柴が訪れたのは、お昼を少し回った頃のことだった。
相変わらず黒のトレンチコートを靡かせて店内に入ってきた羽柴を見て、ソファーを陣取っていたおばさま三人組が「あら、いい男」と黄色い声を上げた。
知らない人間に突然不躾に声をかけられたので、羽柴は面を食らってしまったらしい。変に強張ってしまった羽柴の様子に、おばさま三人は互いに顔を見合わせた。一瞬気まずい空気が流れたが、真一のあの笑い声がすべての強張りを解いてしまう。
「いつもうちはこの調子なのですよ」
羽柴の方もコーヒーメーカーと先日の真一の発言が、頭の中でやっと結びついたらしい。「ああ」とすぐに和んだ笑顔を浮かべた。
「ごめんなさいねぇ。あたし達も遠慮がないから」
「ここにくると、ついつい寛いじゃって」
おばさま三人組は、再び顔を見合わせ「ねぇ」と相槌を打ち合った。
「先日は、お電話で失礼いたしました。ご無理を申しまして」
真一は羽柴のコートを受け取りながら、そう言った。
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