act.02

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 「おい!ニューヨークはどう?!」 「日銀短観の分析結果はまだか!」 「ちょっとそこどいてよ! ニュースが見えないじゃないの!!」 室内には、怒鳴り声と電話のベルが溢れ返っていた。  部屋の中央の壁には、巨大な電光掲示板が王者の風格で赤く瞬いている。その上には、世界各国の現在の時間を示す時計がずらりと並び、横には刻々と変化する世界情勢を映し出すモニターが七台並んでいた。  フロアの中央にある巨大なテーブルを囲むように幾人もの腕まくりをした男が自分の目前にある二台のパソコン画面と電話に噛り付いている。周囲の者は、腕まくりした男達が動くたびに、それをフォローアップするため、室内外を走り回った。窓の外は今にも雪が降り出しそうな雲行きなのに、この部屋は、湯気が吹き上がりそうなほど白熱した空気が充満している。誰もが息つく暇もなく、秒単位で数千万の決断を絶えず下しているのであった。 「ばか! なにやってる!」  突如、テーブルの一角で異常事態を告げる緊迫した声が上がった。     
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