1. 贈り物は常識の範囲内でお願いします。

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―冴。とっても賢くて、優しくて、いつもそばにいてくれそうな動物、なんだと思う? いつもより肌寒い朝、微かに海のにおいが溶け込んだ風が運んできたみたいに、懐かしい声が聞こえた。 子どもみたいな顔をして、おやじギャグまじりのなぞなぞを嬉しそうに出してくる声。 冴がうーんと悩んで首を傾げれば、答えを言いたくてそわそわし出す。でも答えを言ったらまだ小さな冴が怒ることも知っている。 冴は、自分の力で正解したいのだ。そうして、「よくわかったね。」と頭を撫でてほしいと望んでいる。 優しかったあの手が温度と形をなくして風になってしまっても、やっぱりもう一度あんなふうに褒めてほしくて、波の音が風に運ばれて窓をすり抜けてくる夜にはこうして夢を見る。
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