平凡な収拾

2/2
前へ
/5ページ
次へ
 失礼します、といって中年女性がデザートを運んできた。ハンバーグを運んできてくれた時と寸分たがわない、訓練された笑顔で、綺麗に盛られたパフェを私の前に置いた。私はお礼をいってみた。すると女性が少しだけはにかんで笑ったように見えた。  中年女性がキッチンへと戻っていく。その奥に、先ほどの少女たちが丁度席を離れているのが見えた。  テーブルの半分が散らかっていた。  ストローの袋や、食べこぼしが散乱していた。私が品がいいと思っていた少女の座っていた側ばかりが汚かった。  それを去り際に、猿のように口をもごもごさせていた少女が片づけていた。  私は彼女たちのテーブルから視線を逸らした。それからスプーンでパフェを崩しにかかる。  アイスをたっぷりとすくって頬張る。が、少し量が多すぎたみたいで、口の中で染みた。なので周囲をうかがいつつ、こっそりと口から一度だしてしまう。  追ってアイスクリーム頭痛。私は一度出したアイスを取りあえず再び口に運んで、それから頭を抱えた。  私は特別なことのない、誰とも分かち合えない、個人的で平凡な痛みに耐える。そして思う。  私はきっと無駄なことに考えを巡らせて、カロリーを使っている。  自覚症状があるだけマシだと信じたい。うんざりしながら一生付き合っていくであろう悩みだ。  とりあえず、今、私が向き合うべきは、私の無駄な悩みが、このパフェのカロリーを帳消しにしてくれることはない、という残酷な現実だろう。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加