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平凡な収拾
私はデザートを追加注文した。
脳に糖分を送ってみることにした。けれどそのエネルギーは追及のためには使われない。私は注文、という行為で考えることを中断しようとしただけだった。
思考のあれこれはどこか自分でも届かないところへ棚上げ。だけどきっといつか勝手に落ちてくる。そして私はそれで頭を打って、また頭を悩ませるはずだ。
結論なんてでない、という結論で締めくくられた頭の悪い思考実験。だいたい実験室が悪い。私の脳内という場所はファミレスほどには思考に向いていない。
従業員を呼ぶボタンもなければ、注文してみたってフライドポテト一つでてこない。ドリンクバーさえない。
窓の外に目をやってみた。空は青い。あれが落ちてくる、だなんてとてもじゃないが信じられそうになかった。私は不安さえ中途半端だ。
先ほど騒いでいた兄妹の妹の方が、私の目の前を走ってゆき、そしてこけた。そして泣いた。それからその子の兄が駆け寄ってきた。その子は兄と一緒に半べそで家族の席へと戻っていった。
その子の背中を眺めながら私は考える。
きっとこの出来事は、あの家族にとって一つのささやかな事件として残るのだろう。そしていつしか何気ない日常として、覚えていたり覚えていなかったりする、どうでもいい記憶の一つになっていく。
そんな軽さでありながら、私の抱えていた、そしてこれからも悩まされるであろう、壮大で不毛なモヤモヤなどよりも、どっしりと彼女たち家族の現実に根を張ってしまう。
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