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失礼します、といって中年女性がデザートを運んできた。ハンバーグを運んできてくれた時と寸分たがわない、訓練された笑顔で、綺麗に盛られたパフェを私の前に置いた。私はお礼をいってみた。すると女性が少しだけはにかんで笑ったように見えた。
中年女性がキッチンへと戻っていく。その奥に、先ほどの少女たちが丁度席を離れているのが見えた。
テーブルの半分が散らかっていた。
ストローの袋や、食べこぼしが散乱していた。私が品がいいと思っていた少女の座っていた側ばかりが汚かった。
それを去り際に、猿のように口をもごもごさせていた少女が片づけていた。
私は彼女たちのテーブルから視線を逸らした。それからスプーンでパフェを崩しにかかる。
アイスをたっぷりとすくって頬張る。が、少し量が多すぎたみたいで、口の中で染みた。なので周囲をうかがいつつ、こっそりと口から一度だしてしまう。
追ってアイスクリーム頭痛。私は一度出したアイスを取りあえず再び口に運んで、それから頭を抱えた。
私は特別なことのない、誰とも分かち合えない、個人的で平凡な痛みに耐える。そして思う。
私はきっと無駄なことに考えを巡らせて、カロリーを使っている。
自覚症状があるだけマシだと信じたい。うんざりしながら一生付き合っていくであろう悩みだ。
とりあえず、今、私が向き合うべきは、私の無駄な悩みが、このパフェのカロリーを帳消しにしてくれることはない、という残酷な現実だろう。
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