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「気にしないで。お兄ちゃん、昨日も仕事大変だったんでしょ」
手を顔の下辺りで軽く振り、大丈夫という動作をする彼女。
「でも、前回も日和を待たせたし、今度は気をつけないとなあ」
日和は、何度も時間に遅れる俺を一回も怒らない。逆に、気を使わせているのが申し訳なく思った。
「いいから、いいから。ほら、早く座りなよ」
走った疲れがあったため、「すまん」と軽く言ってソファに座った。
「お兄ちゃん、何か頼むの?」
メニューを見ようとせず、仕事場からのメールに追われている俺に、日和は聞く。
「ああ、日和がどこか行きたいところがあったら移動しようか」
俺の言葉を聞いた日和は、違う違う、と首を横に振った。
「お兄ちゃん、なんか忙しそうだからさ。本当は仕事行った方がいいんじゃないかなって」
そんなことは全くなかったが、いつも以上に気を使われているのが引っかかる。誤解を招かないよう、注意して言葉を発した。
「いやいや。今日は仕事なんて行かなくて良いんだよ。日和といる方が大事」
そっか、と微笑して紅茶を啜る。熱い紅茶を飲んで、暑くないのだろうか。
「お兄ちゃんはさ、行きたいところないの?」
日和に聞かれたが、行きたいところなんて正直なかった。
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