ハッキング

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ハッキング

――事件は,ある春の日の夕方に起きた。 警視庁捜査一課のデスクで,警部補の内田(うちだ)圭介(けいすけ)はノートPCで,解決済みの事件の報告書を書いていた。 「……ん?アレ?」 突然,画面がフリーズする。 次の瞬間,書きかけの報告書のファイルが異変を起こした。入力した文字が,徐々に記号の羅列に変わっていく。 「なっ……,なんじゃこりゃあ!?」 内田は思わず叫んだ。どのキーを押しても,マウスを操作してみても,記号化は止まってくれない。 「どうなってんだよ,コレ」 コンピューターにあまり詳しくない内田は,頭を抱えた。 しかし,よく見ると,不調を(きた)しているのは彼のPCだけではないらしい。 「おい,どうなってるんだ!パソコンがおかしいぞ!」 「私のPCもです!」 という怒号や戸惑いの声が,あちこちから飛び交っている。 ……ハッキングされてる?まさか! 警視庁のメインサーバーは,セキュリティが強固なことで有名だ。 それをハッキングする(やから)は,はっきり言ってチャレンジャーだろう。 内田はスーツのポケットからスマホを取り出し,ある人物に電話をかけた。 同期である,サイバーセキュリティ対策室の土山(つちやま)孝平(こうへい)に。 「土山か?俺だ,内田だ。大変なことになってる。今すぐ,捜査一課まで来てくれ。頼む」
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