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例年にない雨量のあった十年前の夏、近所の貯水池が満水になっていた。
普段は水嵩のない池が並々の水を湛える。
風に、水面が揺れる。
嬉しそうに水辺で遊ぶ小学生の子どもの姿が見られた。
私立中学の二年生になっていた滉と楊はその日、定期考査期間で帰りが小学生の子供たちの下校時刻と重なっていた。
最寄りのバスを降り、子供たちが遊ぶ池の近くを通りかかり、滉が呟く。
「アイツら、あぶねー」
「ホントだ。
落ちるよ、あれ」
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