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果たして今、何杯目のウーロンハイなのだろうか。ふとテーブルを見るとジョッキがいくつも並んでいた。
陽菜はだいぶと酔いが回ってきていた。
隣では優衣が大きな声で、すみませーん、レチューおかわり!と店員さんに注文している。彼女も心なしか顔が赤い。酔っているのだろう。
まあいっかと陽菜は肩を下ろして、今日は忘れるまで2人で飲み明かそう、と心に誓った。
「だからね!仕事がうまくいってたのよ」
うまく回らない呂律とうまく働かない頭から次々と文句が口から出ていた。
これじゃあ酔っ払いだ。
「陽菜の仕事~?」
「そう!...もう少しで、でっかーいプロジェクトの権利をウチの会社がとれそうだったのよ、だから朝から夜遅くまで働いて、あんまり家に帰ってなくて...私だけじゃないのよ?みんな必死だったから!」
身振り手振りで自分の気持ちを表す。心なしか声も大きくなっていた。
「それで?」
「ひさびさに家に帰ってみて、直也がね」
「なに?」
「ひさびさに会うのに、仕事の電話をしてた私が悪いけどさ!」
「それは陽菜が悪いわ~」
けらけらと面白くないのに、優衣が腹を抱えている。
陽菜は止まらず喋り続ける。
「俺と仕事どっちが大事なの?って言ったのよ!」
その直也の問いに陽菜は何も答えられなかった。
お互いに仕事もプライベートも尊重し合える仲で何年も付き合ってきたような友達に近い感覚だった。だから、そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
「結婚してもこれじゃうまくいかないねって」
「言われたの?」
「そう!」
がっ、っとジョッキを傾けて、喉を潤す。冷たいウーロンハイは、頭を冴えさせた。しかしアルコールが入っているので、あくまで陽菜の錯覚だ。
「はあ?なにそれ女が仕事を大事にしちゃいかないわけ?なにが俺と仕事のどっちが大事?よ。笑っちゃう。それは私ら女のセリフだー!」
「優衣...」
「よかったわね、陽菜。そんなケツの穴の小さい男と別れて。どうせちんこもちっちゃいのよ。ーー今日はとことん飲むわよ」
「うん...!」
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