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宇宙パンダ
目が覚めたらパンダになっていた。きっと昨日食べたからだ。さて、どうしようか。僕は飛び起きようとしたが、転んでしまった。すると、床が抜けて、ボロアパートの二階から一階に落下した。
尻に嫌な感触がある。恐る恐る見ると、田村という名前しか知らない四十くらいの男が白目をむいていた。おそらく死んでいる。僕は田村食べた。あまり美味しくなかったので、数分後には吐瀉物に変わった。
僕はとりあえず落ち着こうと、テレビをつけた。名前だけ知っているけれど、どこにあるのかわからない国で飛行機が落ちたニュースを正面から見たダンプカーみたいなキャスターが伝えていた。僕はチャンネルを変えた。知らないタレントに知らないシェフが不味そうな料理を教えている。またチャンネルを変える。八話にゲスト出演した俳優が覚醒剤で捕まったドラマの九話が再放送されていた。それをしばらく見て、主人公が芦ノ湖の水を全て飲み干したところでテレビを消して、吐瀉物を避けるように寝転がったらまた、床が抜けた。
止まることなくどこまでも落ちていく。鼻や耳に土がつまり、マントルで焼かれ、地球を突き抜け、空に落ちて、宇宙にたどり着いた。その頃には僕は粒子になっていて、一つ一つに意識があった。
いくつかは月や火星にたどり着き、いくつかは太陽に焼かれ、大多数は真空でなければ世界中の人が一斉に屁をこいたような爆音がしたであろう地球の最期を見ていた。
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