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交通事故に遭ってから4ヶ月あまりで病院を退院したが、脊髄は元の状態に戻らず車いすでの生活を強いられていた。
退院後は自宅で療養しながらリハビリテーション病院に通い、1ヶ月ほどして高校に復帰した。
高校には母親が車で送り迎えしてくれて、高校では先生やクラスの友達が助けてくれた。
自分自身がこんな体になって、車いすでの生活がこんなに不便なのかと思う反面、周りの人の助けがこんなにもありがたいと実感することができた。
放課後は、テニス部の練習にも顔を出して、後輩へのアドバイスなどをした。
ある日のテニス部のミーティングで、僕は全国高等学校テニス選手権大会インターハイに出場できないけれど、皆頑張ってほしいと自分の思いを伝えた。
僕は、リハビリを頑張れば、きっと元の体に戻ることができて、またテニスをすることができると信じたかった。
でも、毎日リハビリを続けていてもなかなか自分の体は思うように動かず、日が経つにつれて現実が分かってきて、テニスを諦めざるおえない状況に追い込まれていった。
僕は、テニスができないのであるならば、テニス以外で自分がやりたいことを見つけようと考えるようになった。
それにはまず、自分自身がテニスに対してけじめをつけようと思った。
いろいろ悩んだ末、僕は自宅で母にお願いごとをした。
「おかあさん、このテニスラケット捨ててほしい!
自分では名残惜しくて捨てられないから、おかあさんに捨ててほしい!」
僕は、長年愛用してきたテニスラケットを、思い切って捨てることにした。
「和也、本当に捨てていいの?」
母の心配する言葉に、僕は何も言わずに頷いた。
これでテニスを忘れて、何か新しいことを探す一歩を踏み出せると感じた。
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