捨てたテニスラケット

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僕は、1年留年して高校を卒業し、大学に進学した。 法律を学ぼうと考えて法律学部のある大学に進学した。 大学は、県内にある国立大学で、電車を使って車いすで通学している。 菜月も同じ大学に僕より1年前に合格して、経済学部で学んでいるようだ。 菜月はサークルにも入っていて、高校の時から続けているテニスサークルに所属している。 僕は時々、テニスコートに行って菜月の練習する姿を見ていた。 僕は、今でもテニスが好きで、テニスをしている菜月の姿を見て、うらやましいと思う感情が沸き起こっていた。 でも、車いすの自分の姿を見ると、現実に引き戻されてしまうような感覚を覚えた。 練習の休憩時間になると、テニスコートの脇で練習を眺めていた僕に、菜月が声をかけてくれた。 「和也も、またテニスしたくなった?」 「うん、したいのはやまやまだけど、でもこんな体じゃね!」 僕は、諦め気味に菜月に話しをした。 「和也、ちょっと見せたいものがあるんだけど時間ある?」 突然の菜月の発言に戸惑いながら、特に急ぎの用事がなかった僕は、 「大丈夫だけど…」 と中途半端な答えを返した。 菜月が僕の車いすを押して、監督に声をかけていた。 「監督、先日お話しした澤田和也君です。」 監督は男性で、 「こんにちは」 と笑顔で挨拶してくれたので僕も慌てて、 「こんにちは」 と挨拶した。 「和也、こちらが天宮監督です。」 菜月が紹介してくれたので、 「澤田です。」 と僕は答えた。
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