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チュンチュン、チュンチュン、チュ――カチャン ツー、カチャ 青色に光るモニターの上、左右に首を傾げながら鳴くスズメのアイコンが滑らせトラッシュボックスに入れた。 スズメ を消しました。 これで、世界からスズメがいなくなった。 かねてから飽き飽きしていたのだ。朝が来るたびにチュンチュンという鳴き声からはじまる小説には。 鶏だってそうだ。加えて鳩時計といい、人間は鳥で朝を迎えるのが好きすぎる。 そして夜には決まって ホー、ホー、ホ―――カチャン、ツー、カチャ フクロウ を消しました。 フクロウ――わかり易すぎる。星だって夜風だって闇だって、夜が夜である理由は溢れているにも関わらずここでも鳥。 できればその感性ごと無くしてやりたいが、形ないものはどうにもできない。 椅子を回し、窓の外を見やる。暮れ時だ。空があかねに染まりキャンパス地のような羊雲にその閃光が色を落とす。奥は夜の青とが混ざり、桔梗色の黄昏が垣間見えている。 当然、カラスはいない。 夕闇だけが残る。静寂こそがすべてだ。 椅子を回す。と、外から何やら聞こえてくる。 窓に近づき、音の方――つまり下を見る。 子供が、ボールを蹴っている。それほど広くもない団地の一角で、壁にぶつけながら一人だけで遊んでいる。 椅子へ向かう。左手で引き、座りながら寄せた。
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