青空のいない世界

6/6
前へ
/6ページ
次へ
「あなたたちの思いは分かりました。 今回は、この子に免じて戻って差し上げましょう。」 言葉だけ聞けば、冷たいように思えるけれど、確かに、青空さんの声は涙に濡れて、震えていました。 そして、その言葉の後、地面が大きく揺れ始めました。 ガタガタっ! バキバキっ! メリメリメリ。 地面は大きく割れ目を作り、そこから青空さんは出てきました。 そして、青空さんは、空へと帰っていきました。 その夜、世界には大雨が振りました。 その後というもの、人々の生活は元に戻っていきました。 全員が元気に出席した教室。 忙しなく働く大人たち。 美味しい空気に満たされて、緑もすくすく育っていきました。 この世界にある物は何一つ欠けてはいけません。 この世界にいる人は誰一人欠けてはいけません。 この世界は今この状態だから良いのです。 どうか、物を大切に。 どうか、自然を大切に。 どうか、全て生き物を大切に。 そしてなにより、自分を大切に。 1度失った物の多くは二度と戻ってきません。 青空の大切さを知った人々は、身勝手な人間たちのために戻ってきてくれた青空さんに心から感謝を伝えるのでした。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加