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「その結果……」
――兄さんのいない世界に、私はいる。
しかし、兄さんがいなくなってもどうしても人は『他人と比べる』という事を止めない。それはもう『人間の性』とも呼べるほどに――。
「ん? あっ、あれ?」
すっと下を向いて歩いていたせいだったからなのか、ふと気が付くと私は『例の公園』の前にいた。
確かに今日はあまり家に帰りたい気分ではなかった。
だから、回り道をしていたのも確かである。しかし、この公園に向かって歩いていた覚えはない。
『……ようやく来たね。待っていたよ』
「あっ、あんたは」
一瞬辺りをキョロキョロしていただけなのに、いつの間に目の前に現れたのは、私を突然この世界に引っ張って来た少年だった。
『どうかな、この世界。君の望み通りだと思っているけど』
「確かに私の望んだ世界よ。まさか兄さんがいないってだけで、こうも『結果』が違うなんてね」
『でもさ。それって君の小さな世界から見れば……って話だよね。大きな目で見れば何の変化もない』
――大きく見れば……。
それは『日本』や『世界』はたまた『地球全体』ぐらいの大きな単位で見れば、人が一人いようがいまいがそんなに大きな影響は出ない……。そんな事は気にせず世界は回る……と言いたのだろう。
「そうかもね。でも……」
少年のいう『ちっぽけな世界』にはどうしても『必要』だった。
『でも?』
この世界は何が必要で、そうじゃないかすらも分からない。そんな不条理な事ばかりが起こる。時には理不尽も不公平も……予期せぬタイミングで起きる。
「やっぱり、私には兄さんが必要だった。なくしてから気づくなんて……遅すぎると思うけど」
正直「自分で望んでおきながら……」とか「今更虫の良い事を……」と言われても、文句の言いようがない。事実であるのだから。
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