忠言は耳に逆らう

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 ただ『天然』というだけあって、たまに『ど忘れ』することもある。  でも、それすら許されてしまう持ち前の……なんだろ『可愛さ?』の様な雰囲気があった。 「でも、なんだかんだ言ってお兄さん……。文弥(ふみや)さんだっけ? 美冬がへこんでいる時とか励ましてくれたり、助言をくれたりするんでしょ? いいお兄さんじゃん」  まぁ、確かにそんな事もしてくれる世間的には『いい』兄さんだが、実は今まで『学校の通学距離』の関係もあって『独り暮らし』をしていた。  しかし、『冬休み』に入った今は一時的に『実家』であるこの家に戻って来ていたのだ。 「……兄さんが帰って来た」 「へぇ、よかったじゃん」  最初は私もちょっと喜んだ。その証拠に私は、小春に兄さんの帰省が決まった瞬間に思わず電話してしまったくらいだった。  でも、しばらくしてその事を後悔した。なぜなら徐々に両親は、いつも言っていた「あの子なら……」という小言を言わなくなり……いや、それ自体はいいことではある……が、今のあの家に……私の『居場所』はない。  つまり、両親は私の『存在』を消したのだ。  兄さんもそんな『おかしな』状況に気がついたのか、どう思ったのか知らないが、天然でありながらも必死に私を励まそうとしてくれた。  でも、その優しさが……私には逆に『惨めな気持ち』を増幅させ、私の心に深く……根の様なモノをはったように感じた。  どうやら私をよく見ていた小春にも伝わってしまっていたらしい。 「美冬。美冬は決して『惨め』じゃないよ。今、お兄さんと喧嘩したら……ううん。悪い事考えちゃダメだよ。悪い事の後には良い事があるんだから」  なんて珍しく小春に忠告をされたまさしく今日。  日頃のイライラと今まで蓄積された惨めな気持ちが大きく爆発してしまった。その結果が……家出をしている『今』である――。
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