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『でも、本当に……いいの?』
「なっ、何が……」
『お兄さんのいない世界に行きたいって話』
「そっ、そりゃあ……まぁ」
『だったら……僕が連れて行ってあげるよ』
最初は「何、言っているんだ?」という言葉が浮かんだが、それ以上にこの少年が誰なのかすら全然分からない。
「えっ、ちょっ……ちょっと待っ」
『そんじゃ、行ってらっしゃい』
たった一言。「待って」と言う暇もなく……私の視界は、真っ暗。という訳でもなく、むしろさっき見上げた星空で覆われた――。
◆ ◆ ◆
「ん……ぅん?」
「あっ、目が覚めた。よかったぁ」
「え……。小春? どうしてここに……」
「どうしたも何も……ここは学校だよ?」
キョトンとした顔で答えた小春に思わず立ち上がり、辺りを見渡した……が、確かにその光景はいつもの教室だった。
「でも、よかったぁ」
「え、なっ何が?」
「まぁまぁとりあえず座って」
「あっ、うん」
突然立ち上がった事で、周りの人たちの注目を集めてしまっていた私に対し、小春は落ち着くように促した。
「いやだってさ。あんまりにも起きないから」
「ごっ、ごめん」
そこは素直に謝っておこう。
「でもまぁ、最近は……家の方が大変だって言っていたからねぇ」
「えっ……と? そっ、そうね」
曖昧な返事になったが、会社が忙しいのは『いつもの事』だ。
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