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「それなのに『バイト』やって生徒会やってテストも上位キープ……って、そりゃあ疲れちゃうよねぇ」
「えっ、バイト? バイト……って、私が?」
「うん……。自分で言っていたじゃん。美冬の会社。事業縮小とかで会社全体の売り上げが落ち込んで……って自分で言っていたじゃない」
「そっ、そうだっけ?」
「そうだよ」
「…………」
小春の言っている事は正直、信じることも出来ないし、そもそも理解に苦しむ話だったが、この口ぶりに嘘や偽りがあるようには見えなかった。
「じゃっ、じゃあ兄さんも大変ね。まさか会社がそんな状態になるなんて思いもしなかっただろうし」
この時。完全に無意識だったが、「兄さんがいるにも関わらず、そんな事業縮小なんて……」と心の中で思っていた事が言葉に出てしまっていた。
「……え?」
なぜか小春の様子がおかしい。
「えっ、美冬。お兄さん……って?」
「? 文弥兄さんの事だけど……」
今度は私が、キョトンとした顔になった。
「間違っていたら……ごっ、ごめん。美冬にお兄さん……っていた?」
「え……ほっ、ほら携帯の待ち受けになっている家族写真にも……」
そう言って携帯電話の待ち受けになっている家族写真を小春に見せようと画面を開くと……。
「あっ、あれ? なっ……なんで?」
確かに画面には『家族写真』が表示された。しかし、その中に……兄さんの姿はなく、両親と私だけが映し出されていた――。
「…………」
あまりに衝撃的な事実に私は思わず言葉を失った。
だって、突然目が覚めたら……今度は突然、教室にいて……しかも、なぜかこの世界の私はバイトをしていて、その理由が親の会社の売り上げが落ちているからで……。
そして、極めつけに家族の一人である『金村 文弥』の存在が……消えてしまっていた。
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