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こんな事実……とてもすぐには……受け入れられそうにもなかった――。
◆ ◆ ◆
「…………」
しかし、いくらその人がその人を受け入れようが受け入れられまいが『時間』というモノは無情にも過ぎ去る。
アルバイトも……まぁ、小春と一緒だったこともあり、最初は戸惑って上手くいかないもあった。
でも、その辺は……自分でいうのもあれだが持ち前の『器用さ』と『慣れ』でなんとなかなった。学校生活も何も支障はない……。
父さんは仕事に没頭し……というところは一見何も変わっていないように見えた。
だが、その仕事内容は……私が知っているモノとは全然違った。人手が足りないせいなのか『書類整理』など『雑務』も一手に引き受けた結果である。
そして、一方の母さんは……というと……必死に仕事をしている父さんとは打って変わって『何もしていない』。
いや、家事はしていたな――。
「兄さんがいれば……」
立場上は『アルバイト』だった。しかし、最先端の流行などの情報を集め、それらを社員に提示し、意見を求め、反映されていた。
周囲の人たちには旧態依然の保守的な考えの人も……というか、父さんがまさしくそんな人だったが、兄さんは根気強く会話を積み重ねた。
もちろん。全てを認められて訳ではなかったが、兄さんの『おかげ』というモノもあった事は事実で、それに呼応する様に会社の業績も上がった。
それに、兄さんがいてもいなくても母さんの態度は変わらず……いや、むしろひどくなっていた。
「…………」
今思えば『何か』起きた時や悩んでいる時はいつも兄さんは私にたった一言だったが、励ましや助言をくれた。
「……忠言は耳に逆らう……か」
確か意味は『他人の忠告は素直に聞き入れられないモノ』だったはずだ。
この言葉は、家出をした日の授業で先生が言っていた『言葉』だ。その前に小春から忠告を受けていた訳だが……。
「本当に……」
しかし、家に帰った時。疲れた表情の私に対し兄さんは「あまり頑張り過ぎるな」と言った。
でも、あの時の私にはその言葉すら煩わしく感じられてしまったのだ。
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