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気分転換に休憩室まで足を運ぶと、三嶋と出くわした。
彼女も仕事が煮詰まったのか、ソファに座ってブラックコーヒー片手にチョコバーを齧っている。
疲れた時には甘いものだが、女の子ってもっと可愛いチョコとか食べないか?
チョコバー丸齧りはあまり見ない人種だ。
「三嶋ぁ」
「主任が居ないからって私に泣きつかないでよ」
鬱陶しいと手をひらひらさせて、三嶋は俺をあしらった。
時任はたぶん、今日は一日経理の方に居るんだろう。
月末だから総務よりもやることが多い。
大変だな、と思う反面、別の意味でこちらも大変だ。
「俺、あいつが何考えてるかわかんねえよ」
自販機から取り出したコーヒーを開けて胃に流し込む。
あれから昼を過ぎて午後四時頃。
新島は特に変わった様子は見られなかった。
逆に意識してしまっていたのは俺の方だ。
例の珍事のせいで、睨むのをやめてくれと告げるのもオジャンになった。
結局俺の周りは何事もなくいつも通りだ。
「新島君、良い子なんだけどなあ。私がチョコあげると嬉しそうに有難うございますってお礼言うし」
「あいつの笑った顔とか俺見たことねえぞ? お前の勘違いじゃねえ?」
「笑顔を勘違いするほど忙殺されてませんから」
三嶋の言う通り、新島は悪いやつではない。
仕事もきちんと出来るし手もかからない。
真面目で、上司を立てる気遣いも出来る。
まだ社会人になって一ヶ月経つか経たないかってところなのに、しっかりしてて何も不満はないのだ。
俺に対しての諸々がなければ。
「やっぱ俺、嫌われてるよなあ」
この間、気のせいだと流した思考がまた溢れ出てきた。
こんなことで悩むのは馬鹿らしいとは思うが、そうは言っても実際に被害を被っているのだから、そんなこと、で片付けるなんてしたくない。
こうなれば、腹をくくるしかない。
今日、仕事が終わったら新島に聞こう。
根は真面目だし、きちんと聞けば答えてくれるはずだ。
もしそれで拒絶されたら目も当てられないが。
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