貴方のことがわからない『大瀬戸 誠』

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「でも主任って私とそんな年も違わないのに仕事もできるし気配りもできる。欠点なんて見当たらなさそう」 「そうなんですよねー、仕事できる男の人ってかっこいいですもん」 メロメロな五十嵐に冷めた視線を送りながらパソコンに向き直る。 両親が同性愛者で身近に女性が居なかったから、女に耐性がない。 仕事ならなんとかかんとか出来るが、プライベートでとなるとちょっと無理だ。 だから経理の女二人の中に俺が混じっている、という状況は心底居心地が悪い。 それに加えて仕事の都合上、時折彼が混ざるんだから目も当てられなくなる。 「主任、今日は経理の方が人手いるだろうからって、一日入るみたい」 「マジですか!? ランチ! ランチ誘いましょうよー」 一応業務時間内なのだけど、目の前では女子会よろしく話に花が咲いて止まらない。 これは止めた方が良いのだろうか? でも新人が口を挟んだら生意気だと思われそうだ。 少なくとも五十嵐は目くじらを立てそう。 「――おはよう」 俺が悶々と悩んでいると、話題の人物が経理部のオフィスに入ってきた。 その瞬間、ピタリと無駄話が止まる。 おはようございます、なんて愛想の良い笑顔をすぐに作れるんだから、女ってのは恐ろしい。 「大瀬戸、おはよう」 俺に声をかけると、奏にぃは自分のデスクに向かった。 部署の窓際、一つだけぽつんとあるデスクはいつも空いている。 主任が座ることになっているから、奏にぃが来る時以外は空席になっているのだ。 そして、何の因果か。俺の真正面に位置しているから必然的に視界に入ってくる。 正直、女子のトークに付き合わされる方がまだマシだ。 出来るだけ視界に入れないように、意識しないようにしてパソコンに向き直る。
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