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結論:どうしようか 『新島 大輔』
毎朝、始業前にオフィスの掃除をするのが俺の日課だ。
時任主任がたまに早く来た時に手伝ってくれるけれど、申し訳ないといつも断っている。
こういう雑用は新人の役目だから、俺がやるのが適当だと丁重に説明すると、時任主任はじゃあ任せようかな、と言ってデスクに戻って作業をする。
とても真面目な人で、俺も見習わなきゃいけないな、と肝に命じているのだが、なかなか上手くいかないのが現状だった。
ひとり掃除しながら思い出すのは昨日の事だ。
江川さんにはとても失礼なことをしてしまった。
俺もあんな事をしたかったわけではない。
業務の話なら余計な事を意識しなくても良いから、何の問題もなく話せる。
けれど、プライベートとなると話は別だ。
江川さんの前となると、どうしても緊張してしまって普段通りに振る舞えない。
時任主任も、三嶋さんも言うほど緊張しない。
俺が意識してしまうのは江川さんだけだ。
江川さんは言葉遣いとか言動が粗野だけど、悪い人ではない。
よく抜ける時任主任に代わって、俺に丁寧に仕事を教えてくれるしわかりやすい。
だったらなんでこんなにも緊張してしまうのか。
一ヶ月前に行われた新人研修で、俺の担当をしてくれたのが江川さんだった。
その時も懇切丁寧に指導してくれたのだが、なんというか。
江川さんの言動の節々が息子を可愛がる父親みたいに思えてならなかった。
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