結論:どうしようか 『新島 大輔』

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母子家庭で育った俺には、長年父親というものが居なかった。 俺が物心ついたあたりで離婚して、母親と俺の二人で生きてきたから。 父親にもっと甘えたかったが、だからといって母さんに再婚してくれなんて言えなかった。 こんな事を言うと江川さんは、まだそんな歳じゃないと怒るだろう。 けれど、俺にとっては父親みたいな存在で、尊敬している先輩だ。 江川さんを前にして緊張してしまうのも、仲良くなりたいだとか、そういう想いが空回りしてしまった結果なんだろう。 もっと彼のことを知りたいと思うのにそれがなかなかうまくいかないなんて、とんだ悪循環だ。 昨日、江川さんに、気になるのか? と聞かれた時だって否定するつもりは無かった。 それなのにあんな態度をとってしまって、挙句帰り際のあれだ。 もうどんな顔をしてあの人と一緒に仕事をしていいか分からない。 自分が仕出かした失態を思い出すたびに、口から漏れるのは溜息ばかり。 とりあえず、江川さんが来たらいの一番で謝ろう。 昨日はすみませんでした、と。 理由を聞かれたら、なんと答えようか。 そこでまた溜息が口から這い出てくる。
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