結論:どうしようか 『新島 大輔』

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何度目かの溜息を吐いた時、履いていたホウキが何かを引っ掛けて遠くに飛ばした。 なんだろうと思いながら拾い上げると、何かの名刺みたいだ。 「ゲイバー・みよし……?」 無意識に読み上げてしまって、慌てて周囲を確認する。 オフィスの掃除をしているのは俺一人だけ。 誰も今の独り言を聞いている者はいない。 ほっと息を吐いて、手の中にある名刺に目を落とす。 ゲイバーって、ゲイの人がやってるバーのことなんだろうか? 字面からそれしか考えられない。 それでもって、これがどこから出てきたかというと。 恐る恐る、先ほど俺がいた地点を見遣ると、そこは江川さんのデスクだった。 どうしようか。 いよいよ土下座しなくてはいけなくなったかもしれない。 昨日今日と厄日なんだろうか。 まだ新年始まって半年経ってないのに、不運が集約しすぎな気がする。 これで後は良いことが起きればプラマイゼロでチャラにできるかもしれないが、あまり期待しないほうがいいだろう。 掃除をする手が止まって、ついでに思考も停止する。 江川さんのデスクからこれが出てきたのは百歩譲って良しとしよう。 問題はこれを何故、江川さんが持っていたかだ。 もしかして、彼はこういうのに興味があるのだろうか。 ゲイバーというのだから、男色の諸々を想像しても何らおかしくない。 性癖は人それぞれだし、別に江川さんが男好きだとしても俺は気にしない。 女が好きだ、男が好きだ、は個人の自由だ。 けれど、今俺の手中にある名刺。 これをどうやって江川さんに返せばいいのだろうか。
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