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向かったのは休憩室。
扉をあけて中に入ると、新島の後ろ姿が見えた。
「江川さん」
振り返った新島の顔は、やっぱり元気がなかった。
朝からあんなことするんだから、心労はハンパないだろう。
少しだけ申し訳なさを感じながら、新島の隣、自販機の前に立つ。
「俺、ブラックじゃなくて微糖で頼む」
「あ、はい。わかりました」
ポケットから小銭を取り出して自販機に食わせる。
ココアのボタンを押して取り出すと、先にソファに座って新島を待つ。
買い終えた頃を見計らって新島に声をかけると、俺の方を向いた。
相変わらず酷い顔をしていて、とりあえず座れと促す。
「新島、ここ座れ」
「え、でも」
「遅れたって時任はそんな事で怒らないから。なんか言われたら俺のせいにしとけ」
「……わかりました」
テーブルを挟んで、向かい側に新島は座り込んだ。
缶コーヒーをテーブルに置いてまだ浮かない顔をしている新島に、先ほど買ったココアを投げて寄越す。
「温かいのにしたけどこれでよかったか?」
「ありがとうございます。俺、コーヒーよりもココア好きなので嬉しいです」
素直な言葉に感心する。
新島の長所はこういうところだ。
きちんと言葉にして思っていることを伝えられる。
それでも俺に対してはあんな態度を取るんだから、それが不可解だ。
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