希望は転職ではなく、復帰

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「ところで1つ質問なんですけど」 「何じゃ?」  冷ややかな声のセーファスに対しホイットニーが答える。 「そのお菓子、どうなさったんですか?」  セーファスは満面に作られた笑顔を見せながらホイットニーに問いかける。ホイットニーの手、口、顎関節、すべての動きが止まった。 「こ、これはじゃな。ままどおるじゃよ。ほれ、ミルクたっぷりママの味~って言うじゃろ?」  ホイットニーがとぼけた表情でそう答えると、セーファスは菓子箱のフタを手に取りまじまじと見つめた。 「なるほど。福島県の銘菓ですか。美味しそうですね。で、そのお菓子、どうなさったんですか(・・・・・・・・・・)?お菓子の名前を聞いてるんじゃないんですけど」 「お、お主、顔が……怖いぞ?」  菓子箱からホイットニーの顔に視線を移したセーファスに対し、ホイットニーは思わずそう答えた。 「そりゃ怖くもなりますよ!アナタまたアマ◯ンから勝手に注文して!どんだけ施術料から使い込んだら気が済むんですか!」 「いやその……甘いものは精神的にいいんじゃよ?」 「ふーん……そうなんですか。甘いものねぇ……それなら先にこれを召し上がってほしいところですけどね」  セーファスは冷たい視線をホイットニーに投げつけた後、部屋の隅に置かれた段ボール箱を力強く指差した。  段ボール箱には「ブラックサンダー」と書かれている。これは先日ホイットニーが施術料をちょろまかして大量購入したものだ。 ※転職、したいんです第3話 46ページ参照 「大長老。アナタ放置してますよね?コレ。48個入りがまだ21ケースも残っているんですけど、どうするおつもりですか?」 「いや、それはじゃの……ま、そのうち食べるわい」 「そのうちって、どのうちですか?いつ迄に何箱消費するつもりですか?きちんとした計画を言ってください」 「そ、それはじゃの……」  ホイットニーが口ごもった瞬間、転職相談所の正門の扉が開かれる音が聞こえてきた。 「お、お客様じゃの。さ、仕事じゃ仕事じゃ……」  ホイットニーは逃げるように正門へと向かっていった。
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